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【医師監修】牛乳で背が伸びるのは本当?身長を伸ばすために必要なこと

【医師監修】牛乳で背が伸びるのは本当?身長を伸ばすために必要なこと

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健康コラム
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公開日
2023/12/19
最終更新日
2024/01/23

子どもから「牛乳で背が伸びるのは本当か」といった疑問を投げかけられた親御さんの中には、実際のところどうなのか気になっている方もいるでしょう。

本記事では、牛乳で子どもの背が伸びるのかどうか、身長を伸ばすために必要なことや注意点についてわかりやすく紹介します。

子どもの身長を伸ばすために、親としてどうすればいいかわからない方も参考にしてみてください。

牛乳画像

牛乳を飲み続ければ背が伸びる?

まずは、牛乳を飲み続ければ背が伸びるのかという点について確認してみましょう。

牛乳を飲んだだけで背を伸ばすのは難しい

毎日牛乳だけをたくさん飲んだとしても背を伸ばすのは、難しいといえます。

牛乳にはタンパク質・カルシウムなどの成長に必要な栄養素が含まれていて、なおかつ手軽に摂取できます。
また、背が伸びる飲み物としてのイメージも強いです。
しかし、豊富に含まれているカルシウムは骨を丈夫にする働きを担っているので、成長にとって大切な成分ですが骨を伸ばす役割はありません。

そのため背が伸びる食生活を意識する場合は、牛乳を取り入れながら栄養バランスのとれた食事を取るのが大切なポイントです。

 

背を伸ばすにはタンパク質などの栄養素も必要

子どもの背が伸びる画像

背を伸ばすには、タンパク質やビタミン類、亜鉛、カルシウムなどのさまざまな栄養素が必要です。

たとえば、五大栄養素のタンパク質は、成長期の子どもに必要な成長ホルモンの分泌を促す働きを担っています。
成長ホルモンは、脳の「下垂体」から分泌され、骨端における変化で身長を伸ばすほか、筋肉の発達や身体機能を維持させる上で欠かせません。

また、体内で生成できない必須アミノ酸は、子どもの成長や背を伸ばす上でも重要な栄養素で、タンパク質に含まれています。

他にも亜鉛やマグネシウムは、骨を伸ばす上で重要な細胞分裂につながりますし、タンパク質の活性化を助けるビタミンKの適度な摂取も心がける必要があります。

背が伸びる要素のひとつである栄養素を重視する際は、複合的に取り入れるよう意識しましょう。

 

■子どもに必要な1日あたりの牛乳摂取量は?

成長期の子どもに必要な1日あたりの牛乳摂取量は、年齢やそれぞれの成長段階によって変わります。

他の食品から摂取できるカルシウムも考慮すると、一般的な牛乳の摂取量の目安は、小学生なら1日あたり300~500ml、中学生は500ml程度です。
給食で出されている牛乳は1本あたり200ml程度なので、100~300ml程度を家庭で飲むと1日に必要なカルシウム摂取量の多くを満たせます。
しかしカルシウムについても、牛乳だけに頼らず、他の食品と組み合わせることが大切です。

 

推奨されるカルシウム摂取量(mg/日)

年齢 男児 女児
 6~7 600 550
8~9 650 750
10~11 700 750
12~14 1000 800

参考:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書│厚生労働省

 

牛乳に含まれるカルシウム量は、普通牛乳100gあたり110mg です。推奨される1日のカルシウム摂取量を牛乳に換算すると次の通りです。

推奨されるカルシウム量を牛乳のみで摂取する目安(g/日)

年齢 男児 女児
6~7  約545 約500
8~9 約590 約681
10~11 約636 約681
12~14 約909 約727

※小数点切り捨て

参考:

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年│文部科学省

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書│厚生労働省

(上記情報を参考に加工して作成)

したがって1日に必要なカルシウムのすべてを牛乳だけで摂取するのは、現実的ではないケースもあります。
カルシウムは葉物や大豆食品などにも含まれるため、成長に合わせて他の食品と組み合わせながら摂取するように心がけてください。

牛乳を飲むタイミングについては、就寝前や運動後といった意見もありますが、いつ飲んでも問題ありません。

 

■ 背が伸びる仕組み

牛乳と栄養、身長の基本的な関係性を把握したあとは、どのような仕組みで背が伸びるのか確認していきましょう。

骨端線(こったんせん)が成長するため

成長期に背が伸びるのは、さまざまな働きで骨端線(こったんせん)が伸びるためです。

骨端線は骨の末端にあり、軟骨細胞で構成されています。成長ホルモンと甲状腺ホルモンが分泌されると骨端線の細胞増殖を促し、骨の成長につながります。

  • 成長ホルモン:脳の下垂体から分泌
  • 甲状腺ホルモン:甲状腺(のどの周辺)から分泌
  • 性ホルモン:男性なら精巣、女性なら卵巣から分泌

思春期が終わるころになると性ホルモンの働きで骨端線が閉じるため、骨端線は伸びなくなり、背を伸ばすのが難しくなります。
また、性ホルモンが過剰に分泌される思春期早発症が無治療の場合には、骨端線が通常よりも早く閉じてしまうため、最終的には背を伸ばすのは難しく低身長になるといえます。
成長期にどれだけ骨端線の成長につながる生活習慣を心がけるかが、重要です。

 

骨端線の成長には外的・内的要因が関係

骨端線の成長は、外的要因と内的要因にわかれています。

内的要因は、体内に関する要素です。たとえば、代謝機能、遺伝やホルモンバランスといった内容が、内的要因として挙げられます。
同じ生活習慣でも人によって身長が異なるのは、遺伝などの内的要因も関係しているためです。

一方、外的要因は、食事の栄養バランスや睡眠の質、運動、精神状態などを指しています。
背を伸ばすために家庭で取り組めるのは主に外的要因で、具体的なポイントを後半に詳しく解説していきます。

 

■大人になってから身長は伸びる?

大人(成人)になってから身長が伸びる可能性は、少ないといえます。

前段でも触れたように骨を伸ばすには、骨端線が残っていなければいけません。
しかし、成長期を過ぎるとそれまで優位だった骨芽細胞(こつがさいぼう:新しい骨を作り出す細胞)が、破骨細胞(はこつさいぼう:骨を壊す細胞)と同程度のバランスに変わり、骨の成長を止めてしまいます。
すると骨端線は閉じてしまい、背が伸びなくなります。

ただし、成人した直後でも骨端線がわずかに残っていれば、少し伸びる可能性もあります。

 

■子どもの背を伸ばすには何が必要?

続いては、子どもの身長を伸ばすために必要な習慣や覚えておくべきポイントを紹介します。

栄養バランスの取れた食事をとる

子どもの身長を伸ばすには、牛乳を適度に飲みつつ栄養バランスの整った食事を取れるようサポートするのが大切です。
成長期に必要な主な栄養素は、以下の通りです。

 

タンパク質

五大栄養素のひとつであるタンパク質は、筋肉や骨をはじめとした身体を作るために必要な栄養素で、成長ホルモンの分泌にも関係しています。

タンパク質の含まれる食べ物は、豚肉や牛肉、鶏肉のほか、卵や豆腐などの大豆類、チーズなどの乳製品などが代表的です。

タンパク質の吸収量を減らさないようにするには、適量の炭水化物を摂取し続ける必要があります。
ダイエットなどで炭水化物の摂取量を減らしてしまうと、身体に必要なエネルギーとしてタンパク質を消費してしまうためです。

そのため食生活を見直す際は、タンパク質と炭水化物のバランスを意識しましょう。

 

カルシウム

冒頭でも解説したように、カルシウムは丈夫な骨づくりに欠かせない栄養素です。
牛乳やチーズといった乳製品、海藻や海産物、小松菜、大豆類などに含まれています。成長期は必要なカルシウム量も多くなるため、意識的に摂るとよいです。

 

マグネシウム

カルシウムの吸収をサポートするのが、マグネシウムです。 

マグネシウムは、ほうれん草や大豆、カツオなどに含まれているので、比較的摂取しやすい栄養素です。
カルシウムは、体内で吸収されにくく大量に摂取しても身体の外へ排出されてしまいます。そこでマグネシウムを一緒に摂取すれば、カルシウムの吸収を促してくれます。

 

亜鉛

亜鉛は、納豆や牡蠣、ホタテ、ナッツ類、レバーなどに含まれている栄養素です。

主に成長ホルモンや性ホルモンの分泌、タンパク質の合成などに関わっていて、身長を伸ばす上でも欠かせません。
体内では亜鉛を生成できないため、食べ物で摂取する必要があります。
シュウ酸、フィチン酸、食物繊維、食品添加物などと同時に摂取すると亜鉛の吸収率を下げてしまいます。
しっかり亜鉛を摂っていると思っていたのに、吸収が阻害されていて計算したほど摂取できていなかったということにならないよう、組み合わせを考慮したメニューを考えるのも大切です。

 

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムの吸収を助ける働きを持っているので、丈夫な骨作りという点でも欠かせない栄養素です。
具体的には、血中のカルシウム濃度を調節したりカルシウムの吸収を促したり、免疫機能の調整を行ってくれます。

鮭やカツオ、ブリ、キノコ類(しめじやシイタケなど)、卵黄など比較的取り入れやすい食材に、ビタミンDが含まれています。

 

ビタミンK

ビタミンKを摂取すると、骨に含まれるオステオカルシンを活性化させて、カルシウムが流出しないようサポートしてくれます。

主にブロッコリーやほうれん草、納豆、わかめや海苔などには、ビタミンKが含まれています。
また、熱に強い性質があるので、炒め物としてそれぞれの食べ物を調理してもビタミンKを摂取することが可能です。

 

ビタミンC

ビタミンCは、免疫機能の調整といった役割の他、骨を形作るコラーゲンの合成を促します。
そのため、身長を伸ばすために栄養バランスを意識する際は、ビタミンCの摂取も進めていくのが大切です。

体内で作り出せない栄養素なので、食べ物から補う必要があります。
主にさつまいもやじゃがいも、レモン、オレンジ、ブロッコリーなどには、ビタミンが含まれています。

 

良質な睡眠を保つ

子供が寝る画像

身長を伸ばすには、牛乳など栄養の含まれる飲み物・食べ物をバランスよく摂取するだけでなく、成長ホルモンの分泌に必要な良質な睡眠を維持する必要があります。

良質な睡眠を維持するには、まず年齢に適した睡眠時間の目安を把握しておきましょう。

一般的に6~13歳は9~11時間程度、14~17歳は8~10時間程度が、適正睡眠時間の目安といえます。
ただし、睡眠時間には個人差があるので、無理やり先述の睡眠時間に合わせる必要はありません。
昼間に居眠りをしたり、朝なかなか起きられなかったりということがなければ問題ないです。

また、成長ホルモンの分泌が増えるのは、入眠(睡眠を始めた時間)から2~3時間とされています。
深い眠りに入れるよう睡眠環境を整えておくのが、成長ホルモンの分泌を促すという点でも重要です。

具体的には、夜更かしをしない、就寝前にスマホやゲーム機・パソコンなどの画面を見ない、就寝前のカフェイン摂取を控えるといった点を守りましょう。

 

適度な運動を促す

子どもが運動している画像

成長期の子どもには、適度な運動を促すのも健康を維持して身長を伸ばす上で大切なポイントです。

運動で骨や筋肉に適度な刺激を与えると骨端線に栄養が運ばれやすくなり、骨の成長につながります。
たとえば、なわとびやジョギング、バレーボールやバスケットボールなどは、適度な運動といえます。
運動時間の目安に関しては、1日あたり1時間程度とされています。

特にジョギングやウォーキングといった有酸素運動(酸素をエネルギーとした運動)は、血流の改善による成長ホルモンの分泌量増加を期待できます。
さらに外で運動を行うと日光を適度に浴びて、体内からビタミンDを生成することが可能です。
適度な強度の運動を開始して15分してから分泌される傾向があります。

 

ストレスを溜め込まない生活を心がける

ストレスを受けている画像

ストレスを溜め込まない生活は、心身の健康や身長を伸ばすという点でも欠かせません。

成長期にストレスを溜め込んでしまうと、脳の下垂体から成長ホルモンの分泌が少なくなる可能性もあります。
すると成長ホルモンの分泌が減少し、骨の伸びに影響を与えてしまいます。

親御さんは、ストレスの解消方法を教えるだけでなく、子どもが悩んでいないか確認したり相談しやすい雰囲気を作ったりするのも大切です。

 

■子どもの身長を伸ばす上で親が注意すべきこと

続いては、子どもの身長を伸ばす上で、親御さんが注意すべき点について解説します。

食事をメインにサプリメントを活用する

栄養はバランスの取れた食事から摂取するのが最も望ましいです。
最初からサプリメントに頼り切ってしまうと、適切な食事量や栄養バランスを維持するのは難しくなってしまいます。
食事内容を見直し、栄養バランスを整えたうえで、なかなか手が届かない栄養素に焦点を当てて補助的に活用するとよいでしょう。

子どもがサプリメントを多量摂取・効果不明なサプリメントを摂取しようとしていたら、すぐに止めてください。
サプリメントを適正以上の量で継続的に摂取すると、臓器にも負担となります。
サプリメントでカバーすべき栄養素は何か、本当に使用すべきかどうかをしっかり話し合うことが大切です。
まずは日々の食事で栄養バランスを整えることから始めてみて、サプリメントの活用を検討してください。

 

ぶら下がり健康器具などの商品に科学的な根拠はない

ぶら下がり健康器具をはじめとした身長を伸ばす器具に科学的根拠はないため、取り入れないよう注意が必要です。

骨の成長を促すには、適度な運動と良質な睡眠、栄養バランスのとれた食事といった要素を満たさなければいけません。
つまり、けん引器具などによって物理的に足や身体を引っ張ったとしても、身長は伸びません。

もし、猫背といった姿勢の改善効果を期待している場合は、
ぶら下がり健康器具などに頼らず、ストレッチを取り入れたり日々の生活で姿勢を意識したりしましょう。

 

■背が伸びるのは牛乳以外の要素も大きい!
運動と食事、姿勢などさまざまな点を意識してみよう!

牛乳には、骨を丈夫にするカルシウムが豊富です。
しかし、背が伸びる要素には、成長ホルモンの分泌に関係するタンパク質をはじめとしたさまざまな栄養素の摂取、適度な運動、良質な睡眠、ストレスを溜め込まない生活などといった部分も必要とされています。

親御さんは、牛乳も取り入れつつ食事の栄養バランスを整えたりよく眠れる環境を整えたりしてみましょう。

 

【記事監修医師】
高座渋谷つばさクリニック
院長 武井 智昭

https://tsubasakai.or.jp/koza/

高座渋谷つばさクリニック 院長 武井 智昭

■経歴
2002年 慶應義塾大学医学部卒業
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務(内科)
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室兼任
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務 (スマイルこどもクリニック)
2015年 小谷クリニック 内科・小児科(訪問診療部)部長
2017年 「なごみクリニック」内科・小児科・アレルギー科 院長
2020年4月「高座渋谷つばさクリニック」院長就任

 

■専門医・認定医

小児科専門医・指導医
日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)
臨床研修指導医(日本小児科学会)
抗菌化学療法認定医
プライマリケア学会認定医
認知症サポート医
小児感染症学会認定医
日本臨床内科学会認定医
日本糖尿病学会認定医

 

 

 



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